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東京地方裁判所 平成6年(ワ)22355号 判決

原告

伊藤律子

ほか二名

被告

小林賢啓

ほか二名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告らは、各自、原告伊藤律子(以下「原告律子」という。)に対し、金四四七三万六七四〇円、原告伊藤基智(以下「原告基智」という。)及び同伊藤晋大(以下「原告晋大」という。)に対し、それぞれ金二〇三一万三五三五円並びにこれらに対する平成六年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要(当事者間に争いがない)

一  本件事故の発生

1  事故日時 平成六年四月五日午後一一時七分ころ

2  事故現場 東京都板橋区中丸町四七番一号先交差点(以下「本件交差点」という。)

3  小林車 普通乗用自動車

運転者 被告小林賢啓(以下「被告小林」という。)

所有者 被告

4  正治車 普通乗用自動車

運転者 訴外亡伊藤正治(以下「訴外正治」という。)

5  事故態様 被告が、被告車を運転して、信号機により交通整理の行われている本件交差点に進入した際、左方から本件交差点内に進入してきた正治車と衝突し、その結果、訴外正治は、平成六年四月六日午前二時分ママころ死亡した。

二  責任原因

1  被告小林

被告小林は、本件交差点は信号機によつて交通整理が行われており、対面信号機が赤色を表示していたのであるから、信号機の表示に従つて本件交差点手前で停止すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠つて進行した過失によつて本件事故を起こしたのであるから、民法七〇九条により、原告らに損害を賠償する責任を負う。

2  被告斉藤秋子(以下「被告秋子」という。)及び同斉藤幸司(以下「被告幸司」という。)

被告秋子及び同幸司は、被告車を所有して、運行の用に供していたものであるから、いずれも自動車損害賠償保障法三条により、原告らに生じた損害を賠償する義務がある。

3  相続

原告律子は、訴外正治の妻、同基智及び同晋大は、同人の子であり、同人の相続人であるから、原告律子は二分の一、同基智及び同晋大は各四分の一ずつ、訴外正治の損害賠償請求権を相続した。

三  争点

原告らは、本件事故は、訴外正治が、本件交差点の対面信号機の青色表示に従つて本件交差点内に進入したところ、被告小林が、対面信号機が赤色を表示しているにもかかわらず、これを無視して本件交差点に進入してきたことによつて発生したものであると主張するのに対し、被告らは、被告小林は、青信号で交差点に進入しており、訴外正治が赤信号を無視して本件交差点内に進入したため本件事故が発生したと主張し、被告小林の過失を否認し、かつ、被告秋子及び同幸司は免責されると主張するほか、仮に被告小林に過失が認められるとしても、本件事案の態様に鑑みて、大幅な過失相殺が認められるべきであると主張しており、本件事故時の信号機の表示が争点となつている。

第三争点に対する判断

一  本件事故の態様について

1  争いのない事実及び証拠上、優に認定できる事実

前記争いのない事実、甲一四、一五、乙一ないし一一及び被告小林本人尋問の結果によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件事故現場の状況

本件事故現場は、山手通りから幸町に通じる通称中丸通り(小林車が進行してきた道路。以下「小林路」という。)と大谷口一丁目方面から川越街道方面に向かう工藤(訴外正治が進行してきた道路。以下「正治路」という。)が交差する、信号機によつて交通整理の行われている交差点である。

小林路は、山手通り方面から本件交差点までは、幅員六メートルで、本件交差点から幸町方面へは、幅員七メートルの、片側一車線の、アスフアルトで舗装された道路であり、山手通り方面から幸町方面に向かつて、約一〇〇分の二の下り勾配になつており、制限速度は時速三〇キロメートルに規制されている。

正治路は、大谷口一丁目方面から本件交差点までは、幅員五・二メートルで、本件交差点から川越街道方面へは、幅員六・九メートルの、片側一車線の、アスフアルトで舗装された道路であり、大谷口一丁目方面から川越街道方面に向かつて、約一〇〇分の二の下り勾配になつており、制限速度は時速三〇キロメートルに規制されている。本件交差点付近は、両道路とも直線で、見通しはよく、いずれの道路も、本件交差点手前約一五〇メートルの地点から本件交差点を見通せる。

本件交差点の山手通り方面側の小林路上の横断歩道上には、小林車のものと認められるスリツプ痕が一条遺留されていた。また、本件交差点中央付近から本件交差点の幸町方面側の小林路上の横断歩道上にかけて、衝突後の小林車と正治車のものと認められるスリツプ痕が五条程度遺留されていた。

(二) 本件事故に至までの小林車の経緯

甲一四、一五、乙一ないし一一及び被告小林本人尋問の結果によれば、本件事故にいたる経過は、以下のとおりと認められる。

知人の訴外関根忠司(以下「訴外関根」という。)に金を借りに行つた帰り、助手席に訴外関根を同乗させ、小林車を運転して、JR大塚駅近くの知人の訴外半田忠男方に向かつた。被告小林は、池袋付近で、警察車両から停止を求められたが、小林車中に、覚せい剤とけん銃を所持していたため、停止勧告を無視して逃走した。

被告小林は、警察車両が追走してくるので、一時停止標識を無視して左折し、一方通行を逆走し、赤信号を無視して進行した。

しかしながら、なおも警察車両が追走してくるので、被告小林は、さらに赤信号を無視して進行したところ、次第に警察車両が、小林車から離れていつた。時速は、五、六〇キロメートルで進行していた。

山手通りに交差したが、信号が青だつたので、そのまま直進し、その際、警察車両が、小林車からかなり離れた地点を走行していたので、ここで警察車両を振り切ろうと考え、時速約八〇キロメートルに加速して進行した。ルームミラーで後方を見たが、警察車両を確認できなかつたので、警察車両が追尾をあきらめたかもしれないと思つたが、できるだけ警察車両を離そうと考え、そのままの速度で進行した。山手通りを通過し、最初の信号機は赤色を表示していたが、被告小林は、時速約四〇キロメートルくらいに減速しながら、これを無視して直進した。その後、次の信号機が、赤色から青色に変わつたのを確認したので、一気に加速し、二つ目の交差点を青信号で通過し、直進した。さらに、時速一〇〇キロメートルに近い速度に加速して進行し、本件交差点に至つた。道路の中央寄りを走つていた。

2  本件事故の状況についての被告小林の供述

本件事故の状況について、被告小林は、概要、以下のとおり供述している(甲一五、乙八ないし一一及び被告小林本人尋問)。

山手通りを通過し、最初の信号機は赤色を表示していたが、時速約四〇キロメートルくらいに減速しながら、これを無視して直進した。その後、次の信号機が、赤色から青色に変わつたのを確認したので、一気に加速し、二つ目の交差点を青信号で通過し、直進した。二つ目の信号が赤から青に変わつたのを確認したので、次の信号も変わるだろうと思い、時速一〇〇キロメートルに近い速度に加速して進行して、本件交差点に至つた。〈1〉地点で前方のA信号が青であることを確認したので、さらに加速して進行したところ、〈2〉地点で本件交差点の左方道路から進行してくるライトか車の前部かははつきりしないが、車両が進行してくることを確認したので、ハンドルを左にきつた。ブレーキをかけたかは、よく覚えていない。

正治車と衝突し、覚せい剤とけん銃というやばい物を持つていたので、けん銃を持つて逃げようとしたが、持ち上げることができず、その後間もなくして警察車両が本件事故現場に到着したので、けん銃を放置したまま逃走した。

3  供述の信用性

(一) 被告小林は、小林車に覚せい剤とけん銃を所持していたところを、警察車両に停止を求められ、これを無視して逃走したため警察車両に追尾され、警察車両を振り切るため、本件事故に至までの間にも、赤信号無視等の、交通法規を無視した運転を続け、かつ、本件事故時も、小林路の制限速度が時速三〇キロメートルであるにもかかわらず、これを遥に超過した時速約八〇キロメートルで走行していたのであり、かかる、被告小林の運転状況、運転心理を考えると、被告小林が、本件交差点の対面信号が赤色を表示していたのを無視して本件交差点内に進入し、本件事故を惹起した疑いもある。

しかしながら、本件事故の状況に関する被告小林の供述は、一部でA信号が赤から青に変わるところを見たと供述している以外は、〈2〉地点でA信号を確認した際の信号機の表示は青色であり、青色信号に従つて交差点内に進入したとの内容で、本件事故直後から本訴に至るまで一貫している上、その供述には、信用性を損なうような不自然、不合理な点は認められない。

(二)(1) 現場に遺留されたスリツプ痕や小林車と正治車の破損状況及び衝突後の移動距離等、客観的な証拠から算出されたものであり、十分に信用できる乙七及び被告小林本人尋問の結果によれば、衝突時の小林車の速度は時速約八〇キロメートル、正治車の速度は時速約四〇キロメートルと認められる。

ところで、乙五(実況見分調書、平成六年四月二八日実施)によれば、被告小林が正治車を発見した〈2〉地点から衝突地点である〈3〉地点まで一五・六メートル進行する間に、正治車は、ア地点から衝突地点であるイ地点まで六・六メートル進行している。時速八〇キロメートルの秒速は二二・二二二メートルであるから、これから換算される正治車の秒速は約九・四〇一メートルとなり、時速では約三四キロメートルとなる。また、乙六(実況見分調書、平成六年五月三日実施)によれば、被告小林が正治車を発見した〈2〉地点から衝突地点である〈3〉地点まで二六・八メートル進行する間に、正治車は、ア地点から衝突地点であるイ地点まで少なくとも九・八メートル進行している。時速八〇キロメートルの秒速は二二・二二二メートルであるから、これから換算される正治車の秒速は約八・一二五メートルとなり、時速では約三〇キロメートルとなる。ただし、乙六では、被告小林は、ア地点に正治車を発見したとは指示せず、正治車のライトを発見したと供述しているだけであり、正治車が、より後方から進行してきた可能性を否定していないので、正治車の速度がより高速であつた可能性は否定できない。

これらの速度は、前記認定の正治車の速度と若干の食い違いが認められるが、元来実況見分調書の指示説明は、必ずしも正確な距離関係を反映しているとは認めがたいので、右の点だけから、被告小林の供述が信用できないとは言えない。

(2) 調査嘱託の結果から認められる山手通りの信号機、その後本件事故現場までの二か所の信号機及び本件事故現場の信号機は、それぞれ関連性なく表示が変動するので、被告小林の供述の信用性に影響を与えるものではない。

(三) 訴外関根は、小林車の同乗者であるが、本件事故の状況について、「被告小林は、六〇から七〇キロメートルで進行し、本件事故直前は時速約一〇〇キロメートルで走行していた。事故の時は、ズドンというような感じで何かに当たつたという感じは受けたが、相手の車がどちらから来たか、その確認さえもできなかつた。」旨供述しており、他に、小林車の速度を時速八〇ないし九〇キロメートルと供述している部分も認められるが、本件事故の際の本件交差点の信号機の表示について供述していると認められる証拠はない(乙七)。

その他、小林車を追尾していた警察車両に乗車していた警察官が、本件事故を目撃していた旨の証拠はなく、また、本件交差点付近に居住する訴外岡田秀夫が、本件事故を目撃していた旨の証拠もない(乙七)。

(四) 結論

以上のとおり、被告小林の事故態様に関する供述内容は、客観的事実に反するような不自然、不合理な点は認められず、他に、被告小林の供述の信用性を覆すに足りる証拠もないため、被告小林の事故態様に関する供述は採用せざるをえない。

4  本件事故の態様

以上の次第で、本件事故は、被告小林が、被告小林車を運転して時速約八〇キロメートルで、小林路側の対面信号機の青色表示に従つて本件交差点内に進入したところ、訴外正治が、正治路の対面信号機が赤色を表示しているにもかかわらず、正治車を運転して本件交差点内に進入した結果、本件交差点内で小林車と正治車が衝突したという事故であると認められる。

二  被告小林の過失の有無

右認定した本件事故態様によれば、被告小林は、小林路の制限速度が時速三〇キロメートルであるにもかかわらず、これを遥に超過した時速約八〇キロメートルで走行した結果、左方から本件交差点に進入してきた正治車と衝突して本件事故を発生させたのであり、被告小林が、制限速度を遵守して小林車を運転していれば、訴外正治が、対面信号が赤色を表示しているにもかかわらず本件交差点内に進入してきたことを考えても、本件事故は、発生しなかつたと認められる。

したがつて、被告小林には、制限速度遵守義務違反の過失が認められ、民法七〇九条により、訴外正治及び原告らに生じた損害を賠償する責任が認められる。

三  過失相殺

右認定の各事実によれば、被告小林は、小林車に覚せい剤とけん銃を所持していたところを、警察車両に停止を求められ、これを無視して逃走したため警察車両に追尾され、警察車両を振り切るため、本件事故に至るまでの間にも、赤信号無視等の、交通法規を無視した運転を続け、かつ、小林路の制限速度が時速三〇キロメートルであるにもかかわらず、これを遥に超過した時速約八〇キロメートルで走行した結果、左方から本件交差点に進入してきた正治車と衝突して本件事故を発生させたのであり、被告小林がかかる高速運転を行つていなければ、訴外正治が、対面信号が赤色を表示しているにもかかわらず本件交差点内に進入してきたことを考えても、本件事故は、発生しなかつたか、少なくとも、訴外正治が死亡するという重大な結果は発生しなかつたと認められる上、被告小林が、かかる無謀な高速運転を行つた経過に鑑みると、被告小林の責任は重大であると言わなければならない。

しかしながら、右認定のとおり、本件事故は、訴外正治が、信号が赤色を表示しているにかかわらず、本件交差点内に進入してきたため発生したものであり、本件事故が発生した時刻が深夜であり、当時、車両の通行量が少なかつたこと等の道路事情から考えても、信号機の表示にしたがつて進行していた被告小林に比すると、信号機の表示に反して進行していた訴外正治の責任の方が重いと言わざるを得ない。

よつて、本件では、損害額から七割を減殺するのが相当である。

第四損害額の算定

一  訴外正治の損害

1  逸失利益 二二四五万八六一一円

(一) 給与相当分

訴外正治は、本件事故時、訴外株式会社和久製作所(以下「訴外会社」という。)に勤務し、六六五万三四四六円の年収を得ていたところ、訴外正治は、本件事故時四一歳であつたので、訴外会社の退職年齢である満六〇歳までの一九年間は、毎年右六六五万三四四六円の得べかりし利益を喪失したものと認められる。その間の、訴外正治の逸失利益は、右の六六五万三四四六円に、生活費を三〇パーセント控除し、一九年間のライプニツツ係数一二・〇八五三を乗じた額である金五六二八万六二二三円と認められる(円未満切り捨て、以下、同様。)。

次に、訴外正治は、訴外会社を退職後は、退職金を受領することに鑑みて、訴外会社に勤務中の年間六六五万三四四六円と同額の年収を得る蓋然性は認め難く、訴外正治の収入として蓋然性が認められるのは、賃金センサス平成六年第一巻第一表男子労働者学歴系六〇歳ないし六四歳の平均賃金である四五二万〇五〇〇円と認められる。したがつて、訴外正治は、満六〇歳から労働可能な年齢である満六七歳まで九年間は、毎年の四五二万〇五〇〇円得べかりし利益を喪失したものと認められる。その間の訴外正治の逸失利益は、右の四五二万〇五〇〇円に、生活費を三〇パーセント控除し、二六年間のライプニツツ係数一四・三七五一から一九年間のライプニツツ係数一二・〇八五三を減じた二・二八九八を乗じた額である金七二四万五七二八円と認められる。

よつて、訴外正治の給与分の逸失利益は、右の合計六三五三万一九五一円と認められる。

(二) 退職金分

甲七によれば、訴外正治の推定退職金は一一〇三万一三〇〇円と認められるところ、これに、生活費を三〇パーセント控除し、六〇歳までの一九年間の現価を算出するためライプニツツ係数〇・三九五七を乗じた額である金三〇五万五五五九円から、甲七により認められる訴外正治の死亡時に支給された二九七万九〇〇〇円の退職金を控除した差額七万六五五九円が、退職金に関する逸失利益と認められる。

(三) 合計 六三六〇万八五一〇円

2  慰謝料 一〇〇〇万円

本件事故の態様、訴外正治の生活状況、家庭環境等、証拠上認められる諸事情に鑑みると、本件における訴外正治の慰謝料は、一〇〇〇万円が相当と認められる。

3  合計 七三六〇万八五一〇円

4  相続

原告律子は二分の一、同基智及び同晋大は各四分の一づつ、訴外正治の損害賠償請求権を相続したので、原告律子の相続した損害額は、同基智及び同晋大の相続した損害額は、左記のとおりとなる。

(1) 原告律子 三六八〇万四二五五円

(2) 原告基智及び同晋大 各一八四〇万二一二七円

二  原告律子固有の損害

1  葬儀費用 一二〇万円

本件と因果関係の認められる葬儀費用は、経験則上、一二〇万円と認めるのが相当である。

2  慰謝料 八〇〇万円

本件事故の態様、家庭環境等、証拠上認められる諸事情に鑑みると、本件における原告律子固有の慰謝料は、八〇〇万円が相当と認められる。

3  合計 九二〇万円

三  原告基智及び同晋大固有の損害

慰謝料 四〇〇万円

本件事故の態様、家庭環境等、証拠上認められる諸事情に鑑みると、本件における原告基智及び同晋大固有の慰謝料は、それぞれ四〇〇万円が相当と認められる。

四  原告らの損害合計

1  原告律子 四六〇〇万四二五五円

2  原告基智及び同晋大 各二二四〇万二一二七円

五  過失相殺

前記のとおり、本件ではその損害から七割を減額するのが相当であるから、その結果、原告らの損害額は、原告律子につき一三八〇万一二七六円、原告基智及び同晋大につき、各六七二万〇六三八円となる。

六  損害金

本件事故日である平成六年四月五日から後記自賠責保険金が支払われた平成六年七月五日までの九一日間の右各損害額の遅延損害金は、原告律子につき一七万二〇四三円、原告基智及び同晋大につき、それぞれ八万三七七七円となるので、後記の自賠責保険金が支払われるまでの間の遅延損害金を含んだ原告らの総損害額は、原告律子につき一三九七万三三一九円、原告基智及び同晋大につき、それぞれ六八〇万四四一五円となる。

七  既払金

本件事故にともなつて、平成六年七月五日に、原告らが、自動車損害賠償責任保険より三〇〇〇万円の支払いを受けたことは、当事者間に争いがないので、原告律子が損害のてん補を受けた額は一五〇〇万円、原告基智及び同晋大が損害のてん補を受けた額は、それぞれ七五〇万円となるところ、右のとおり、遅延損害金を含んだ原告らの総損害額は、原告律子につき一三九七万三三一九円、原告基智及び同晋大につき、それぞれ六八〇万四四一五円であるので、本件における原告らの損害は既に支払い済みとなつている。

第五結論

以上の次第で、原告らの本訴請求は、いずれも理由がない。

(裁判官 堺充廣)

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